手がしびれる
「手根管症候群」とは
手首にある骨と靭帯に囲まれている管状の空間のことを「手根管」と呼びます。指を曲げるときに働く腱と正中神経が通っています。
そして「手根管症候群」とは、この手根管で何らかの原因によって正中神経が圧迫を受け、手のしびれや痛みを伴う疾患です。
手を酷使する方に多い?
手根管症候群の原因
手根管症候群は、手根管内を通る正中神経が圧迫されることで発症します。
原因としてまず挙げられるのが、手の酷使です。特に手指の曲げ伸ばしを伴う作業を長時間・繰り返し行うことで、手根管内の滑膜が増加するなどした場合に、正中神経が圧迫されやすくなります。
その他、妊娠、更年期などで女性ホルモンのバランスが大きく変化することも、発症の原因になると言われています。
手根管症候群の症状
主な症状は、親指、人差し指、中指、薬指(薬指は親指側のみ)のしびれ、痛みです。指で物に触ったとき、感覚が鈍いような感じがあります。
発症時は中指に、その後まわりの指に症状が広がっていく傾向があります。また症状は、夜間・明け方に強くなります。
日常生活では、ボタンをかけられない、小銭を摘まめない、OKサインを作れないなどの不都合が生じます。
診断・治療について
検査
問診・触診、ファーレンテストなどを行い、診断します。超音波検査やMRI検査、筋電図検査などが必要になることもあります。
なおファーレンテストとは、手首を90度曲げて30秒保持したときの症状の有無・変化を調べる検査です。
当院では神経伝導速度検査を行い、神経の障害の程度を客観的に数値で確認することが可能です。
治療
内服薬や外用薬、ステロイド注射など薬物療法、装具療法を行います。
内服薬
末梢神経の保護・再生の効果があるビタミンB12の内服を行います。
外用薬
痛み止めの成分を含む湿布や塗り薬を使用します。
ステロイド注射
炎症が強い場合には、ステロイド注射が有効になります。
装具
装具を使用し、手首を安静にします。
手術
麻痺がある場合や保存治療で改善のない症例には手術加療が有効です。
局所麻酔を行い圧迫の原因となっている横手根靭帯を切開し神経を除圧します。通常、局所麻酔で行い10-15分程度の手術時間です。
母指の対立運動障害がある方は同時に母指対立再建手術も可能です。詳細は医師にご相談ください。
放っておくとどうなるの?
自然に治る!?
手の運動機能・
感覚機能が低下します
物を掴んだり引っ張ったりする運動機能だけでなく、微妙な力加減を支える感覚機能が低下します。
これにより、ボタンをかけられない、小銭を摘まめない、OKサイン(人差し指と親指できれいな丸を作る)ができないといったことがあります。
またさらに進行すると、痛みや温度に対する感覚も鈍くなり、切り傷や火傷を負ったり、その傷に気づけないということも起こります。
早期治療により、運動機能・
感覚機能を守りましょう
「しびれているけれど、そんなに困らないから」と長く放置していると、上記のような運動機能・感覚機能の低下が進みます。手根管症候群のやっかいなところは、ご自身で自覚しにくいくらいの、緩やかなスピードで症状が進行していく点です。
これにより、実際には機能が低下しているにも関わらず「まだ大丈夫だろう」と考えてしまうのです。手根管症候群は、進行するほど治療が難しくなります。早期治療により、大切な手の機能とQOLを守りましょう。
自然に治ることはある?
手根管症候群は、軽度のものであれば、実は自然に治ることがあります。ただ、「自然に治るだろう」と自己判断して放置するのは危険です。先述の通り、気づいたときには症状が進行しているということがあるためです。
根拠なく自然治癒を期待して医療機関を受診しないのではなく、医療機関で診断を受けて保存的治療でしっかりと治すことが大切です。
手根管症候群の時に
やってはいけない!?予防法
手根管症候群の疑いがあるとき、診断を受けたときには、以下のような行為は控えましょう。症状が悪化したり、治りが遅くなったりします。
手の酷使
日常生活において、私たちは高頻度で手を使っています。まったく使わないことは困難ですが、以下のようなことは避けるようにしてください。
スポーツにおける手の酷使
手を使うスポーツは、医師の許可があるまで中止しましょう。手根管症候群の治療においては、手の安静が非常に大切になります。
仕事における手の酷使
キーボードのタイピング、スマホのフリック操作、調理、道具・機械を使った手の酷使は、できる限り控えましょう。とはいえ、どうしても仕事を休めないということもあるかと思います。そういった場合には、医師と相談し、装具(サポーター・スプリント)を使用するなどの対策を講じます。
家事における手の酷使
家事においても、手を使う頻度は高くなります。掃除、洗濯、料理などはできる限り家族に手伝ってもらうなどして、避けてください。タオルや雑巾を絞る動作は、特に手に負担をかけます。
症状を放置しない
手根管症候群を長く放置していると、正中神経の圧迫、および手の運動・感覚機能を元に戻すことが困難になります。
症状に気づいたときには、様子見するのではなく、できるだけ早く、当院にご相談ください。
手根管症候群の症例
手根管症候群(正中神経の除圧)
正中神経が手根管部で圧迫を受けているために手のしびれが出現します。進行すると親指が小指側にもってこれなくなります。
手術では手のひらに約3cmの切開をおいて直接正中神経を確認して除圧します。
手術時間は10-15分くらいで費用は3割負担の方で約12,000円です。
手根管症候群(母指対立障害)
進行してしまい母指の対立障害(母指がてのひら側にあげられず母指と小指がくっつかない)がでた患者さんには母指対立再建も同時に行うことがあります。
腱の走行をかえて母指が小指の方に動くようにします。つまみ動作がしやすくなります。
母指があがらない
腱の走行をかえて母指があがるようにする
術後半年母指があがるようになり対立できるようになった
手術時間は60分程度で費用は3割負担の方で約70,000円です