屈筋腱損傷・伸筋腱損傷

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腱損傷(けんそんしょう)

筋肉の収縮を骨に伝える「腱」が断裂したりすることを指します。完全に断裂した場合には、そこにつながっていた筋肉をまったく動かせなくなります。また、神経損傷、腱癒着による運動制限が生じることもあります。
ここでは、指屈筋腱損傷、伸筋腱損傷についてご説明します。

手や指を切った時に起きる指屈筋腱損傷とは?

親指には1本の、それ以外の指には2本の「屈筋腱」があります。指屈筋腱損傷とは、この屈筋腱が断裂した状態です。

怪我や加齢でも?原因について

切り傷、刺し傷などの外傷による腱損傷がほとんどです。また、骨折して変形した骨によって腱が擦り切れ、断裂に至ることもあります。加齢によって変形した骨が原因になることもあります。

指が曲がらない?症状について

屈筋腱が損傷した指が曲がらなくなります。また付近の神経が傷ついた場合には、しびれ伴います。
損傷の部位、程度によって、第一関節のみが曲がらない、第一・第二関節ともに曲がらないといった症状の違いがあります。
手のひらに広範囲の切り傷を負い、複数の指が曲がらないということもあります。

移植手術が必要な場合も?治療法とリハビリについて

腱が自然につながるということはありません。手術が必要になります。
手術のタイミングが遅れると、腱をつなぐことが難しくなります。その場合は、近くの他の腱とつないだり(腱移行)、他の部位から腱を移植する(腱移植)こともあります。
手術後のリハビリも重要になります。

Zoneとは?ZoneⅡの治療と治療期間について

屈筋腱損傷は、その部位ごとにZone 1~Zone 5に分類されます。Zone 1が中節骨中央以遠を、Zone 2が中節骨中央からMP関節までを、Zone 3が中手骨中央までを、Zone 4が手根管部を、Zone 5が前腕をそれぞれ指します。
特にZone IIの治療では注意が必要です。術後の癒着の可能性が高く、腱をつないでも指を動かせないということが起こりやすいのです。早期からのリハビリテーションにより、癒着を防ぐことが大切です。
当院では、理学療法士・作業療法士が、医師と連携しながら患者様に合ったリハビリテーションを提供しております。
なお治療期間は、症例によっても異なりますが、3~6カ月程度(場合によっては1年の経過観察)が目安となります。

指が伸ばしにくくなってしまう伸筋腱損傷とは

指を伸ばす「伸筋腱」の損傷です。指が伸ばしにくくなります。神経にも損傷が及んでいる場合には、指先のしびれ、冷えた感じがすることもあります。

リウマチやケガで起こる?原因について

切り傷を負ったときや、突き指の衝撃などで伸筋腱が損傷するケースが目立ちます。
ご高齢の方の場合、加齢による関節の変形によって伸筋腱損傷が起こることもあります。
その他、リウマチの方は手関節の滑膜炎を原因として、変形性手関節症の方は変形した関節によって伸筋腱が擦り切れ、損傷に至ることがあります。
最近指が伸びなくなったといった症状で気づかれることもあります。

指が伸びない?症状について

指が伸ばしづらくなるというのが基本的な症状です。
伸筋腱損傷は第一関節での頻度が高くなります。第一関節を伸ばしづらくなり、槌指変形をきたします。放置すると、第二関節は伸ばせる一方で、第一関節が手のひら側に大きく曲がるようになります(スワンネック変形)。
第二関節での伸筋腱損傷では、第二関節が手のひら側に、指先が手の甲側に反る変形が起こります(ボタンホール変形)。

シーネ固定の固定期間は?治療法とリハビリについて

伸筋腱損傷の治療では、装具を装着したり、シーネ固定をしたりといった保存的治療が中心でしたとなりますが、最近では手術加療も多く選択されます。
外傷による伸筋腱損傷では手術が必要です。
シーネ固定の期間の目安は、約5週間です(手術の場合は3週間)。
受傷から時間が経過した場合は腱移行術や腱移植術が必要になることもあります。リウマチや変形性関節症では原因となっている骨の治療も同時に行います。

神経損傷・腱断裂の症例

神経損傷

主に外傷で受傷します。ナイフやハサミ・カッターで誤って切ってしまったり、怪我をして受傷します。指の神経損傷では腱が切れていなければ指を動かすことができるため、指の傷だけ治って神経損傷に気づかないことがあります。しびれていたり、感覚が鈍いことがあれば専門医受診をおすすめします。
受傷後早期(おおむね1週間以内)であれば神経を直接縫合(写真①)します。時間が経ってしまうと切れた神経断端が変性してしまい直接縫合できなくなります。その場合は神経移植術(写真②)か神経再生誘導術(神経の再生を促す治療材料、写真③)を行います。

直接縫合(写真①)

Before

After

神経移植術(写真②)

Before

After

神経再生誘導術(神経の再生を促す治療材料、写真③)

Before

神経損傷⑤術前

After

手術時間は40-60分程度で、費用は3割負担の方で40,000-80,000円程度(治療材料を使用した場合別途かかります)します。

腱断裂

主に外傷で受傷します。屈筋腱(指を曲げる腱)は親指以外は2本あり、どちらか1方だけの損傷ではなんとなく指は動くので気づくのに遅れます。伸筋腱は親指以外は外在筋と内在筋からなり外在筋は人差し指と小指は2本ありますが中指と薬指は1本だけになります。いずれも基本的には手術をしないと治ることはありません。基本的には腱を直接縫合する腱縫合術(写真)を行いますが、直接縫合できない場合は腱移植術や腱移行術を行います。

腱縫合術(写真①)

Before

腱断裂①術前

After

腱断裂②術後

腱縫合術(写真②)

Before

After

手術時間は30-60分程度で費用は3割負担の方で40,000円-80,000円かかります。